理事長所信


はじめに

本会議所は地域社会及び国家の政治・経済・社会・文化等の発展を図るとともに、会員相互の信頼のもと、資質の向上と啓発に努めるほか、国内外の関係諸団体との協力促進をし、国際的理解を深め、世界の繁栄と平和に寄与することを目的とする。これは公益社団法人鹿屋青年会議所(以下:鹿屋青年会議所)の定款に定められた組織として根幹にある揺るぎない目的であります。

私たちは同じ目的、同じ志をもったメンバーが40歳までという限られた時間の中で、毎年新しい英知を導入し、「修練」「奉仕」「友情」というJCの三信条を基に創始の志を継承しながら、熱き想いと行動力で、常に若者らしく挑戦し運動を展開してまいりました。しかし、それぞれの時代にはそれぞれ求められる背景があり、達成すべき目的も少しずつ変化してきております。様々なことが物凄いスピードで変化していく今の時代。市民のニーズも地域のニーズも変化し、鹿屋青年会議所も状況に応じて柔軟な姿勢で運動に取り組む必要があります。

「過去はずっと、子供は親の時代より豊かになっていた」という言葉を聞いたことがあります。この言葉を聞いたとき私は、「私たちの世代が今これからの地域の豊かさを決める分岐点に立っている」と感じました。私たちの行う運動というものは、次世代を意識し、将来へ向かっての新しい可能性を創り出していくものです。今この瞬間が青年会議所というステージの上で、不連続の連続という永遠を駆け抜ける一瞬一瞬の現在であるということを認識し、「守るべきもの」と「革新すること」を見極め、変わらぬ進化とともに熱き友情と絆を育みながらこれまで以上に強い団結力を持ち、私たちの志を故郷へ捧げましょう。

つながりが輝き紡ぐ組織の運営

組織において最も大切なのはメンバー一人ひとりです。今の鹿屋青年会議所を形成しているのは紛れもなくメンバー一人ひとりであることはいうまでもありません。しかしながら時代の流れとともに、組織のあり方、組織運営の手法も変わってきております。鹿屋青年会議所も現状に満足せず、組織というものをメンバー一人ひとりが認識し、引き継がれてきた伝統ある規律を基に正しい組織運営と公益社団法人として地域の有益を考え事業を推進する透明性ある組織運営を継承しながらも、絶えず組織として個として進化し続けなければなりません。青年会議所の組織運営は「ディティールコマンド」、すなわち目的を達成するための行動や手法を詳細に「指示する運営方法」ではありません。「ミッションコマンド型」、目的は与えるがそれを達成する行動や手法の決定は「委ねる運営方法」です。単年度、単年度で組織は変化しますが主役は変わらずメンバー一人ひとりです。行動や手法の決定は委ねることである程度の自由が加わります。自由が与えられればそこには責任感が生まれます。責任感と自由が与えられた時にこそ100%以上の成果を発揮出来ると私は考えますし、これまでも青年会議所活動の中でそのような体験を幾度となくしてまいりました。メンバー一人ひとりが組織運営のプロセスへ参画することで組織に対する意識や考えを理解し、知識を得て経験を積み、個が輝き成長へとつながります。そして個が輝きながら成長し、強固な組織を確立させることで今まで以上に魅力輝く組織になると考えます。

全体最適という言葉があります。私は組織が全体最適を目指すことは一番大事なことだと思います。なぜならば限られた資源と時間の中で、より価値の高い物事を地域に捧げて組織を成長させていくためには部分最適よりも地域も含んだ全体最適が必要と考えるからです。地域のつながりとともにメンバー一人ひとりが心と心でつながり互いが輝きあい、青年会議所活動を通じてともに成長していける効率性と効果性のある力強い組織運営を目指します。

地域に伝える発信から伝わる運動の発信

これまでも私たちは現代の情報社会において、ホームページやソーシャルメディアサービス等、様々な手法を用いて青年会議所運動の発信を実践してまいりました。しかし私たちの運動について、なぜ、何のために、行っているのかという想いや目的まで伝わっているかと言えば私は疑問に感じております。発信とは地域へ伝わらなければ何の効果も生みません。伝わる発信でより多くの市民に対し発信する情報を通じ運動の拡がりを見せるものであり、世代に関係なく共感が生まれ、市民の意識変革へとつながるものだと思っております。2018年度は鹿屋青年会議所創立55年という節目の年にもなります。この節目の年に年間を通じて各種マスメディアとも積極的に連携を図り、鹿屋青年会議所の価値をブランディングするとともに、鹿屋青年会議所が携わっている事業を広く認知していただきます。また、より多くの市民を巻き込んだ運動を展開していくためにも、地域・行政・関係諸団体・シニアクラブの方々に従来の手法にとらわれない戦略的且つ効果的な伝わる発信を実践いたします。

各種団体と連携した未来につながる まちづくり ひとづくり

私は鹿屋青年会議所に入会し、これまで鹿児島ブロック大会の主管開催、創立50周年記念式典、更には九州地区大会鹿屋大会や他にも鹿屋青年会議所の青少年育成事業や地域活性化事業など数えきれない程の大会や事業を経験してまいりました。その全ての経験というものは行政また各関係団体や青年団体など地域の皆様からのご理解とご支援、ご協力があってこそ得る事が出来たと思っておりますしそれは紛れもない事実であります。鹿屋青年会議所ではこれまでの先輩諸兄が地域に根ざしながら積み上げた歴史があり、築き上げた信頼をもって、行政をはじめとする関係各所・各種団体との協働、連携をいただけております。つまり私たち鹿屋青年会議所は地域の皆様のおかげをもってJC活動が出来ている事はもちろんのこと、会員がJAYCEEとして存在できる事も地域の皆様のおかげさまであるという感謝の気持ちを持ち続けなければなりません。

2018年度も私たちは各種団体との連携を育みながら、新春賀詞交歓会・鹿屋体育大学新入生歓迎会・かのや夏祭り等の事業へ鹿屋青年会議所の情熱ある行動とともに参画して参ります。積極的に感謝の気持ちを持ちながらも地域で開催される様々な地域事業にひとりの青年としても主体的に参画してまいりましょう。それが、これからも地域に根ざしながら積み上げる鹿屋青年会議所としての歴史となり、その築き上げた先にある信頼こそが地域から必要とされる「ひと」へとつながります。

地域の未来を拓く心豊かなたくましい青少年育成

未来を担う青少年が「地域のたから」として心身ともに健やかにたくましく育つことは誰もが願うことであります。しかし、核家族化・少子化の進行や直接的な人間関係の疎遠化、有害情報の氾濫等、青少年を取り巻く環境の変化は、青少年の意識や行動に様々な影響を与えております。この地域には地域の住民同士の結びつきや助け合いの精神がまだ残っていることに加え、郷中教育など先人の教えが今でも伝えられるなど、教育を大事にしてきた伝統があり、このような鹿児島の特性を生かした青少年の育成が必要です。また、ここ最近の様々な青少年問題の背景は、大人社会の反映だとも言われております。子供の問題は大人の問題であるという事実をしっかりと認識し、大人が子供と真正面から向き合うことが大切です。

私は今の子供達に必要なこと、それは「遊び」ではないかと考えます。 ルールを知り、計画性や協調力、人への思いやり、自らの行動力、企画力、責任などこれらの要素が複合的に組み合わせたものが子供にとっての「遊び」の本当の意味であると学んだ事があります。今ではテレビやインターネットを介した感覚的な「間接体験」、ゲーム等を通じた模擬的な「擬似体験」等の様々な体験があります。しかし、「間接体験」や「擬似体験」の機会が圧倒的に多くなった今、子供たちの成長にとって負の影響を及ぼしているとも言われております。やはり私たちが未来を担う青少年に与えるべき機会というのは人や物とかかわり合う「直接体験」だと考えます。そして、この係り合いのある直接体験こそが今の子供達に必要な「遊び」だと考えます。健やかにたくましく生きる力、そしてこの地域の古くからの伝統である地域で青少年を育てる風土を残すためにも異年齢集団での直接的な体験活動を実践してまいります。

未来へつながる地域主義

「木を見て森を見ず」という言葉があります。物事のいち部分や細部ばかり見て、全体を見失い物事はうまく行かないとの例えです。それと対比する「森を見て木を見ず」という言葉もあります。どちらも正しいのかもしれないですが私は「木を見て森を見る」ことを理想とします。先にも述べました通り、組織において最も大切なのはメンバー一人ひとりです。個が輝き合い成長し、それらが集まり魅力輝く組織へとなります。さらには地域が輝き、この国が輝き、明るい豊かな社会へと発展いたします。

鹿屋青年会議所メンバーは入会年数5年未満の会員が約7割を占めています。まだまだ私たち青年会議所の活動・運動をよく理解出来ていないメンバーも少なくはないと感じております。私たちが行う活動、そしてそこから傳わる運動の意味をよく理解し、ひとりのリーダーとして自覚を持ち、より素晴らしい人財を育てていかなければなりません。青年会議所は「まちづくりをする人づくり」をする組織ともよく耳にします。青年会議所では1年で役職が変わる単年度制がとられています。その意味とは、私はやはり人づくりというものにも重きが置かれていると考えます。また、鹿屋青年会議所が創立より続けている唯一の継続事業があります。それは会員拡大です。会員拡大はこの地域におけるJC運動の拡大です。多くの同志が集い、地域を巻きこんだ活動、そして運動が、明るい豊かな社会の実現に繋がるものと考えます。また、活動・運動の原動力ともいえる会員が増えることで、人のつながりから得られる成長の場面もおのずと増えます。会員拡大は、全員のメンバーの大切なテーマです。会員自らが、仲間になってほしい方に、自らの活動や目標を自分の言葉で、想いで語ることができなければなりません。

鹿屋青年会議所とその源である会員、そして新たなる人財となりうる仲間ともに、未知なる未来を見据え、魅力ある人財、ひとりの青年として自己研鑽に努められる運動を行ってまいります。

2010年度、私たちは「地盤、看板、カバン」で投票するのではなく政策と人物本位で政治選択をすることを目的に鹿屋市長選挙に伴うローカルマニフェスト型公開討論会を開催いたしました。そして、2017年度、私たちは改正公職選挙法の施行に伴い、選挙権が18歳以上に引き下げられたことを契機とし、高校生を対象に生徒が政治や選挙への興味、関心を持って頂き、選挙の大切さについて理解し、未来を選択する権利のある主権者にならなければいけないという当事者意識を高めることを目的に青少年育成事業を実施いたしました。私たちは常に地域のビジョンを市民と共有し、次世代への責任感を高めていく必要があります。私たちの運動は「市民意識変革運動」であり、意識から行動へ移せるよう一人でも多くの市民に地域を深く知ってもらう機会を提供していく必要があります。

私たちは、未来を担う若者の政治選択への意識も高揚し、政治により深く反映されていくことで民主政治は更に成熟していくものと確信するとともに、私たち自身がまちづくりについて考え、議論をし、さらには地域の方々が自分たちのまちについて考え主体性を育む機会を提供していきます。

新しい可能性が生まれるまちづくり

現在、全国では国・地方を通じた厳しい財政状況や本格的な人口減少など、大きな変革期を迎えております。それは、この地域においても全国に先行して進行しております。また、このような人口減少が若年層を中心としたものであるため、人口減少に伴って高齢化が同時に進んでおります。地域によっては50%を超える高齢化率となっており、今後、地域への若年層を中心とした定着が必要です。

この地域には、恵まれた豊かな自然・観光地などの資本があると同時に、この地域にしかない歴史・文化・暮らし・食などの自慢できる豊富な魅力が付加価値として数多に存在しております。これまでも鹿屋青年会議所では地域の魅力発信や発見など多くの事業を地域とともに行って参りました。しかし実施したという実績に満足することなく、私たちは魅力あるまちづくりを絶えず続けていかなければなりません。2018年度、鹿児島県は大河ドラマ「西郷(せご)どん」の放送や「明治維新150年」という節目の年を迎えるほか、国内外からおよそ一万人の青年会議所会員が集う世界会議に次ぐ規模の国際会議でありますASPAC(アスパック)が開催されるなど、国内外からの注目が集まる絶好の機会になるものと捉え地域や社会の問題を解決できる可能性を模索していきます。私たちは地域や社会の問題を解決できる可能性を模索しこの地域へ価値ある一歩を踏み出してまいります。

また、2011年に発災した東日本大震災から6年の月日が経ちますが私たちの記憶に当時の惨状は今でも深く刻まれております。そして、記憶に新しい2016年熊本地震の発災。同年9月には台風16号が私たちの住む地域にも上陸し激甚災害にも指定されるほどの大きな被害をもたらしました。2016年度、鹿屋青年会議所は大隅地区社会福祉協議会連絡協議会と大規模災害時における物資支援やボランティアの協力を定めた協定を締結しました。災害の際に速やかな行動に移すためには会員一人ひとりがこのまちの安全をつくる当事者としての自覚と防災や減災に対する意識が必要と考えます。会員一人ひとりはもちろんのこと、地域の方々へ防災や減災に関する情報や知識を得ることができる機会を提供いたします。

未来へ届く55周年

鹿屋青年会議所が1963年に創立して本年度は55年の節目を迎えます。「明るい豊かな社会」の創造に志を掲げ、設立より半世紀以上にわたり先輩諸兄が流された汗、絶え間ない努力と情熱に、そして今日に至るまでの55年間に関わって頂いたすべての皆様に感謝するとともに、私たちは今一度、先人たちの創ってきた熱き想いと伝統が受け継がれてきたこの団体に大きな誇りを持つ必要があります。

私たちは鹿屋青年会議所の「守るべきもの」を継承し、この歴史の延長線がいつまでも続くために我々現役メンバーが今後何をすべきで何ができるのか、未来と希望を語り「革新すること」をともに検討し、鹿屋青年会議所の60周年へ向けた指針を示します。また、私たちは5年前の創立50周年記念式典にて「55周年に向けた指針」の発表を行いました。この5年間実施されてきた事業を検証し、成果を確認することで、私たちの運動をより高い効果が得られる発展へとつなげます。そして、これまで培ってきた鹿屋青年会議所の歴史を振返り、これまで協力していただいた先輩諸兄の皆様、行政・諸団体の皆様とともに記念式典、記念誌の発行を通じ鹿屋青年会議所の存在意義を再確認するとともに、この地域へ私たちの進むべき方向性を明確に示します。さらに、これまでの地域の方々への感謝の気持ちを形にするために、未来へ夢溢れる事業を展開し、これからの歴史へ新たなるステップを地域とともに踏み出します。

決意

1963年の南九州新聞に鹿屋青年会議所の認証伝達式の記事が今も大事に事務局には保管されております。そこには「日本青年会議所より初代理事長であります簗瀬正義君へ認承証が伝達され認承証を受領した初代理事長はこれを高く掲げた」と記されてあります。当時全国から300名の青年会議所会員が集まり、また行政をはじめ多くの関係諸団体の方々が見守るなか認承証を高く掲げ、会場にいる方の目につくように示しました。私はここに鹿屋青年会議所創立の並々ならぬ決意と情熱を感じました。また、2013年に開催されました50周年記念祝賀会の際に今は亡きチャーターメンバーである先輩が当時50周年運営委員長の私に「今日はいい1日だった。ありがとう」と言い「こんし(この人達)も連れっ来た(連れてきた)」と言いながらスーツのポケットから1枚の白黒写真を取って見せました。それは創立総会での鹿屋青年会議所創立メンバー集合写真でした。50周年という記念すべき節目を会員として委員長として過ごす中で常に、時代とともに歩んできた鹿屋青年会議所の歴史を紐解く中で、その時々の多くの先輩方のたゆまぬ努力を知るとともに、鹿屋青年会議所の時を超えた絆を感じることができました。

初代理事長であります故簗瀬正義先輩をはじめチャーターメンバーの先輩方とそのご家族、行政・諸団体の方々、この鹿屋青年会議所立ち上げの時にどれだけの方々がご尽力され、周囲の協力と理解を得て設立されたのでしょうか。本当に多くの支えがあったからこそ歴史が作られ、今の鹿屋青年会議所が在ることを私たちは決して忘れてはなりません。JC活動・運動ができる重さを胸に、連綿と受け継がれてきた創始の志を風化させることなく、先輩諸兄が築き上げられた伝統と情熱を受け継ぎ、そして未来へ引き継いでいまいりましょう。そして、ともに肩を組みながら「修練・奉仕・友情」の三信条を胸に、今を生きる青年として、その時時の志を傳え郷土へ捧げていこうではありませんか。

最後になりますが、これまでの経験を生かし、素晴らしい仲間たちとともに考え行動し、偉大な先輩方から受け継いできた志を傳えていくためにも1年間理事長職を全力で全うしていく事をお誓いするとともに、公益社団法人鹿屋青年会議所の活動に、先輩諸兄の皆様、行政・諸団体の皆様、地域に住まう方々のご理解とご協力をお願い申し上げ、2018年度理事長所信とさせていただきます。